はじめに
こんにちは。フライウィールでデータ アナリストをしている吉野 祐輝です。今回は前回の“DX時代の成功を左右する「データ成熟度」とは?”に引き続き、組織のデータ成熟度についてご説明いたします。特に本記事では、実際のビジネス現場で組織のデータ成熟度をどのようにして計測するのか、評価するのかについて具体的な手法をご紹介します。
目次
- データ成熟度とは?
- データ成熟度を知る方法とは?
- CMMI Institute
- Deloitte x Google
- Data Orchard
- フライウィール
- まとめ
データ成熟度とは?
前回の記事にも書きましたが、簡単におさらいをしたいと思います。
データ成熟度とは、特定の組織がデータをより適切に活用できるようになることを目的とした、データ活用がどれだけ進んでいるかができるだけ客観的に測定された「指標」です。今後数年間で企業が保有できるデータ量は爆発的に増加し、収集したデータを保存するだけでかなりのコストが発生します。それらデータをコストとしてではなく資産としてビジネスに繋げるには、データ活用ができうる組織なのかを把握し、改善し、戦略を立てることが重要です。
データ成熟度を知る方法とは?
世界中を見回すと、様々なデータ成熟度の診断ツールがあり、「プロジェクトマネジメントに関する成熟度」ほど標準化がされていないのが実態です。そのため、ここでは世界的に有名な組織のものを含め、4つのアクセスできるツールに厳選して紹介いたします。
■CMMI Institute
CMMI Institute が提唱しているデータ管理成熟度モデル (Data Management Maturity Model)は、データ管理のベストプラクティスを6つの主要カテゴリに区分したフレームワークで、組織が自らの能力を測定し、長所と短所を識別できるようになっています。
(*CMMI は Capability Maturity Model Integration の頭文字をつなげた略語。 日本語では能力成熟度モデル統合と訳されます)
6つの主要な調査カテゴリとしては、1. データマネジメント戦略 2. データガバナンス 3. データクオリティ 4. データオペレーション 5. プラットフォーム&アーキテクチャ 6. サポートプロセスです。それぞれのカテゴリで成熟度が5段階(1. 実行レベル 2. 管理レベル 3. 定義レベル 4. 測定レベル 5. 最適化レベル)に設定されています。
なお、CMMI Institute は、カーネギーメロン大学ソフトウェアエンジニアリング研究所(CMU/SEI)が創立した組織で、データ管理以外にも製品開発や人材管理などの成熟度モデルやベンチマークを組織に提供している権威と歴史のある組織です。
トレーニングクラスや認定資格コースも準備されており、データ成熟度評価後もとても手厚くサポートされています。
■Deloitte x Google
Deloitte は Google のサポートを得て、グローバルデータ成熟度レポートと診断ツールを公開しています。レポートは現時点では小売店向けとニュース・メディア向けに特化したものが二種類あり、Google が保有するサイトでは10分程度で完了する診断ツール(リンク先は小売店向け)を提供しています(英語)。
小売企業向けの調査カテゴリは、1. Strategic Direction and Data Foundations 2. User Experience 3. Core Sales Activities 4. Emerging Monetization Opportunities の4種類あり、成熟度レベルは4つの段階(Nascent、Developing、Mature、Leading)に設定されています。
小売店向けのレポートでは、小売企業が高度なデータ機能を活用して、コアとなる営業活動や顧客体験を強化するとともに、メディア資産としての小売プラットフォームを収益化する方法を説明しています。特に、データ利活用が進んだ小売業者はデジタルとの接点を最適化できるため、データに精通していない競合他社に対する優位性を確立する機会があると強調しています。
■Data Orchard
Data Orchard 社 はイギリスにある調査会社です。データ成熟度アセスメント(Data maturity self assessment)を独自で開発し、企業のデータ成熟度を評価するツールを提供しています。評価ツールは二種類あり、5分で終わる簡易調査と、20分ほどかかる完全版があります。
Data Orchard が採用しているフレームワークでは、成熟度は5つの段階(Unaware、Emerging、Learning、Developing、Mastering)に分類され、調査カテゴリは Uses、Data、Analysis、Leadership、Culture、Tools、Skills といった7つのテーマで企業のデータ成熟度を評価しています。
アセスメント ツールはこちら。
■フライウィール
フライウィールでは先行事例を日本企業向けに調整した日本語のツール、「データ成熟度」アセスメント調査を開発しました。データ活用の基盤整備の現状からユーザー体験、営業活動、収益化などの評価ポイントを5分で回答できるアンケートで構成されています。本アセスメント回答後にはベンチマーク データを含んだ評価シートを送付させていただきます。
現在ベータ版のため一般公開はしておりませんが、貴社担当の営業、もしくはこちらのフォームからお気軽にお問い合わせください(本調査サービスは一時停止しております)。このようなアセスメント調査は、例えて言うなら定期的に受ける健康診断のようなものです。企業のデータに対する健康の維持や課題点の予防・早期発見に役立てるものですので、気軽な気持ちで受けてみましょう!
もちろん、回答いただいたデータについては各社様の機微(センシティブ)情報であることを重く理解しているため、他社向けに使うことはございませんのでご安心ください。
※こちらの画像は一部のサンプルイメージです。実際のアセスメント評価シートとは変更されます。
※フォームからお問い合わせいただくと、別途「データ成熟度」アセスメント調査へのリンクをお送りいたします。
まとめ
今回は「データ成熟度」を評価する具体的な方法について簡単にご紹介しました。
もし「うちの組織はあまりデータ利活用が進まない」「データ利活用をしろと言われているが、何をしたらよいか分からない」「他企業に比べて自社のデータ活用の取り組みは正しい方向にむかっているのだろうか」といった悩みがありましたら、まずは「データ成熟度」アセスメント調査(本調査サービスは一時停止しております)からスタートしてみませんか。調査後に入手できる評価シートは、データ利活用のプラン策定に役立つはずです。
もちろん、データ利活用を地に足をつけて進めていきたい場合は、データに対する重要性を経営層がしっかりと腹落ちさせ、戦略レベルでデータ成熟度に関わるロードマップを策定する必要があります。トップダウンで一足飛びに Netflix や AirBnB などのデータ成熟企業になれることはありません。身の丈にあった着実な改善がデータ活用の成熟度レベルを引き上げます。
また、データ活用の業務に従事している「現場」から主体的に組織を改革したい場合は、次の3つがベスト プラクティスと考えます。
1. 現場で小さい成功(Small Success)を積み上げる
2. 外部のデータ専門企業を招聘し、第三者目線から経営層の視座を動かす
3. 経営層にデータ成熟度が高い企業のサービスをとにかく体験してもらう(例:Amazon Go の現地訪問など)
状況への満足・不満足に関わらず、業務自体が機能している場合には、馴染みの薄い考え方や新しいやり方を取り入れる動機づけがあまり行われません。その際は、経営層と現場をつなぐ共通言語(小さな成功、未来の体験、もしくは外部専門家の声)を活用することが、データ成熟度向上への第一歩になるでしょう。
フライウィール製品に関するお問い合わせはこちらのフォームからお願いします。
また、ソフトウェアエンジニア、データサイエンティストなどの共に新しく価値あるプロダクトを一緒に生み出すメンバーの採用を積極的に行っています。募集職種はこちら。
Author: 吉野 祐輝(フライウィール データ アナリスト)
機械学習や統計解析を用いて、顧客データの要件分析から製品導入時の効果検証までデータ分析に関わる業務を全般的に担当。前職のGoogleでは、日本市場を含めたアジア太平洋地区のアプリディベロッパーに対して、データ分析を活用したマーケティング戦略策定を支援。